名訳集1
翻訳という仕事を20年ほど続けている僕は、当たり前のことですが、英語の勉強を毎日しています(自慢ではないですよ)。勉強していると(勉強とはいっても、上手な人の訳を書き写しているだけですが)、ときには名訳にふれて感動することがあります。そんな名訳を紹介すれば、英語学習者の一助になるのでないかと思って、これからいくつか紹介していきたいと思います。
最初はサマセット・モームの『The fall of Edward Barnard(エドワード・バーナードの転落)』からです。訳者は行方昭夫さんです。
I thought you hadn't succeeded in what you set out to do and were ashamed to come back when you'd failed.
君が予想通りに仕事が運ばず、失敗したのが恥ずかしくて帰国しないのだと見当をつけたんだ。
これまでに僕がいちばん感動した訳です。
「I thought」に「見当をつける」という訳を当てるなんて、僕にはできない芸当です。「succeed in」を「予想通りに~が運ばない」と訳すセンスは、どうやったら身につくのでしょうか。
「what you set out to do」を「仕事」とまとめるところもお見事です。でもこれは文脈によるかな。
「come back」を「帰国」とするのも文脈によるかな。国境を越えていなければ、「里帰り」かな?
僕が翻訳家として大成しなかった理由がわかるような気がします。だんだん気分が落ち込んできたので、ここまでにしておきます。