『上機嫌の本』佐藤愛子

波乱万丈で豪快な人生を送ってきたんだろうな、と思わせる内容のエッセイです。

 

興味を持って調べてみたら、驚きましたよ。1923年(大正12年)生まれで2回も離婚しているんです。

 

女は結婚したら、どんなことがあっても耐えなくてはならないなんて言われていた時代に、2回も離婚するなんて、そうとう白い目で見られたに違いありません。

 

1967年、44歳で、2番目の夫の会社が倒産して、3500万円もの借金を引き受けています。今から50年以上前、雇用機会均等法前に、この額の借金を女の身で背負うなんて、正気の沙汰ではないですよ。

 

そうとう気の強い人なんだろうな。

『最後の花時計』遠藤周作

以前、遠藤周作さんのエッセイを読んで感心したので、図書館で借りてきました。

この世のさまざまなことについて、不平、不満をぶちまけています。老人が愚痴をこぼしているっていう感じです。

年を取ると、とやかく言いたくなるのかもしれないけど、僕はそうなりたくないな。どうしたら、年をとっても明るく楽しく生きていけるんだろう。

『ありがとうのかんづめ』俵万智

育児書のようなエッセイです。俵さんが息子さんをどのように教育してきたかが綴られています。

僕なんかは教育について何も知らないけど、俵さんの子育ては正解なんだろうな、さすがは元教師だなって感じです。息子さんがうらやましくなります。こういう育てられ方をしたら、立派な人物になれるだろうな、と思います。

教育で大切なことは、教えることではなくて導くことなんだなって、この本を読んで知りました。もっと早く読みたかったな。もっと早く読んでいれば、うちの子の育て方を間違えずにすんだのに。

でも、まあ、この本を読んだからといって、いい親になれるとは限らないか。俵さんみたいな立派な人物にならないと、いい親になれるはずないか。

『英文読書術』行方昭夫

私が自分の父親よりも尊敬する王貞治さんは、テレビのインタビューに答えて次のように言っています。

人間だからミスして当たり前って言うでしょ? そういう意味で、プロは人間ではない。

これだけ自分に厳しかったから、868本もホームランを打てたんですよね。1980年に王貞治さんがこの記録を打ち立てて以来、この記録を破る人はいまだに現れていません。

私はこれでもプロの翻訳家ですから、翻訳に関しては人間であってはならないんです。

10回やったら10回できて当たり前。100回やったら100回できて当たり前。

王貞治さんは上のようにも言っています。

私も翻訳でミスしてはいけないわけです。

だから、毎日、ほんのちょびっとずつですけど勉強しています。勉強していると気づくことがあるんです。自分のことを棚に上げて、他人のミスに気付くことがあるんです。

『英文読書術』という本があって、ナサニエル・ホーソーンの『David Swan』という短編が紹介されています。その中に次のような一文があります。

These were a couple of rascals who got their living by whatever the devil sent them, and now, in the interim of other business, had staked the joint profits of their next piece of villainy on a game of cards, which was to have been decided here under the trees.

この英文の訳は次のようになっています。

彼らは悪漢であり、悪魔の支持するどんな悪事でもやってのけて生計を立てていた。今は、他の仕事の合間に、次の仕事での共同の儲けを賭けて、木の下でトランプをやろうとしたのだった。

「whatever the devil sent them」は、直訳すると「悪魔が彼らに送ったものなら何でも」ですから、悪魔からの命令には何でも従うという意味だと思うんです。だから、「支持」ではなくて「指示」ですよね。「悪魔が悪事を支持する」のではなくて、「悪魔が悪事を指示する」んですよね。

東大名誉教授の訳ですから、私が間違っている可能性が高いのですが、どうしても納得がいきません。どうしてこの英文の訳に「支持」を使うのか。だれか教えてください。

『百人一酒』俵万智

お酒を話題にしたエッセイです。よくまあ、お酒の話をここまで続けられるよな、と感心してしまいます。本当にお酒の話だけなんですよ。たまにはお酒以外の話も混じるだろうと思っていたら、108話すべて、最初から最後まで徹頭徹尾、正真正銘、お酒の話だけ。俵万智さんって、本当にお酒が好きなんですね。

好きこそ物の上手なれで、お酒の知識の深いこと、深いこと。読み始めると楽しくて、どんどん読み進められます。予想がつくとは思いますが、読むとお酒が飲みたくなります。それだけではなく、実際には飲んでいないのに、ほろ酔い気分になってきます。俵万智さんの言葉の魔術なのでしょうか。

ほろ酔いかげんでどんどん楽しく読み進めていくと、だんだんお腹いっぱいになってきます。別の言い方をすると、鼻につくようになってくるというのかな。シャトーがどうのこうの、ビンテージがどうしたこうした、このお料理にはこのワインを合わせるとか、そういうお洒落な話になってくると、ダサい僕は反感を持ってしまうんだな。高価なお酒をごちそうになったなんて話を聞くと、やっぱり俵万智さんは僕とは別世界の人なんだなって思ってしまうのは、僕のひがみ根性が強すぎるんだろうな。

SICKってヤバイよね

私はこれでも翻訳家の端くれなので、たまには英語の話題を。

「sick」という英単語を小学館ランダムハウス英和辞典で調べると、次のように定義されています。

1. 病気の、かげん(ぐあい)が悪い
2. むかついて、吐き気を催して
3. すっかり不愉快になって、うんざりして、(熱望で)こがれて、悩んで
4. 心(道徳心、感情)がおかしくなった
5. 病的な、不健全な
6. 気味の悪い、ぞっとするような
7. 病人の、病人のための
8. 病気に伴う、病気を示す、病気を思わせる
9. いやでたまらない、しゃくにさわって、むしゃくしゃして
10. 調子が狂って、ぐあいが悪くて、不調で
11. 月経中で
12. 十分な収穫を上げられない、有害微生物を含む

良い意味はないようです。

ところが、YouTubeで動画を見ると、この「sick」が良い意味で使われていることがあります。https://www.youtube.com/watch?v=3QjI_ddV88oをチェックしてみてください。少年が小包を開けてけん玉を取り出しているのですが、「sick」を連発しています。

it's pretty sick it's a mystery kendama unboxing
Oh boys boys this is sick
holy this is sick

その少年は、「sick」を連発しているからといって、そのけん玉が気に入らないようではなく、それとは正反対に心の底から喜んでいる様子です。たぶん、この少年は、日本語の「ヤバイ」という感覚で「sick」を使っているのでしょう。

「ヤバイ」という言葉は、私が若いころは悪い意味でした。「先生にバレたらヤバイよ」というように使っていました。今の若い人たちは、この同じ「ヤバイ」を良い意味で使うんですよね。関西方言の「めっちゃ」と組み合わせて、「めっちゃヤバイ」などというように使われているのをよく耳にします。私がけん玉の難しい技を決めたとき、10歳年下のけん玉仲間が、「うわっ、ヤバッ」と「ヤバイ」の短縮形を使って驚きを表現したときは、褒められているのかけなされているのか、一瞬とまどいました。

「sick」にも、「ヤバイ」と同じような意味の変化が起こっているのでしょうか。それとも、YouTubeのこの少年だけが特殊なのでしょうか。

『やっぱり、ひとりが楽でいい』岸本葉子

岸本葉子さんのエッセイからは、何となく淋しさを感じてしまいます。これまでに読んだ岸本葉子さんの本が、癌を患った後のものばかりだったからでしょうか。癌になる前の作品は面白おかしいかもしれないと思って、この本を選んでみました。

なぜ淋しさを感じてしまうのか分かりました。岸本葉子さんは孤独を愛する人だったんですね。人と関わることを極端に嫌い、独りでいることを存分に楽しむ人だったんですね。

僕も、カッコよく言えば、孤独を愛する人間です。でも実際は、僕が変わり者だから人が寄ってこなくて独りぼっちでいるだけなんですけどね。本当は人と関わり合いたいから、人と会うときははしゃいでしまって、その結果、周りから変人と思われてますます孤独になっていってしまうんです。人から変人扱いされないためにはどうしたらいいんだろう、なんて悩んだりして、人と関わるたびにそんなに悩むんだったら、人付き合いなんかやめた方がいいのかもなんて考えてしまって、自分から孤独になったりするんです。

だから、淋しそうにしている人というのは、本当は人との交流を待ち望んでいるものだと思っていました。けど、そうではなくて、本当に心の底から独りでいることを楽しむ人がいるんですね。驚きました。岸本葉子さんが3日も家にこもって平気でいるなんて。

かと言って、岸本葉子さんを変人扱いしようなんて思いません。むしろ尊敬します。しっかりした考えを持って、人に媚びずに生きてゆく姿はかっこいいではないですか。見習わないといけないな。