檀ふみさんは奥が深い

檀ふみさんは、『父の縁側、私の書斎』というエッセイを『ああ言えばこう食う』とほぼ同じ時期に書いていますが、この2冊、趣がまるで違います。しっとりとしたと言うか、落ち着いた雰囲気の文章です。読んでいて心が洗われる気がします。教会で十字架にはり付けられたキリスト像の前に膝をついて涙を流す、というほどまで心が清らかになるわけではありませんが、読んでいると嫌なことをすべて忘れられます。ふふふ、と笑みがこぼれるような、そこまで言うか、と驚くような、楽しい文章も書ければ、こんな風情のある文章も書ける檀ふみさんは、奥が深い、魅力的な女性なのでしょう。

こんなに魅力的な女性がなぜ独身なのでしょうか。周りにいる男どもの目は節穴なのではなかろうか。ウィキペディアによると、檀ふみさんは若い頃ラブレターを送ったけれども、返事をもらえなかったそうです。相手の男は、「コーヒーギフトはAGF」というあのコマーシャルを見たことがないにちがいない。NHKの「連想ゲーム」で檀ふみさんが活躍していたのを見ていなかったのか? 可愛らしさと美しさを持ち、教養もセンスも備えた檀ふみさんをふるか?! こんなに素敵な女性を幸せにしてあげたいとは思わないのか? そんな奴は馬鹿たれだ! と怒りがこみ上げてきますが、そのお相手は現在、フジテレビの取締役だそうです。立派な人物ではないですか。たぶん、檀ふみさんの長身に怖気づいた小男に違いない。

もしも檀ふみさんからラブレターをもらったら、僕は岩崎宏美さんの「ロマンス」です。

もしもとべるなら
とんでついて行く
たとえ嵐でも
たとえ遠くても
あなたが好きなんです

ラブレターをもらって、ほいほい付いて行く僕の方が馬鹿たれかな。

腰痛にお悩みの方に朗報です。

アンドルー・ワイル博士が健康について書き連ねている本の中で、アメリカの整形外科医John E. Sarno氏の『Healing Back Pain』という本を紹介していました。読むだけで腰痛に効くという触れ込みでした。

 

そんな馬鹿な、と疑っていましたが、本なんてたかが数千円だから、騙されたと思って読んでみました。そしたら、効いたんですよ、本当に。まったく痛みが消えたわけではないし、機敏な動きをするのはまだちと怖いけど、とても楽になりました。

 

Sarno氏は仕事柄、いろいろな患者さんの写真を撮っていました。CTとかMRIとかです。腰痛以外のことで写真を撮ったけど、腰の部分の写真を見ると、この患者さんは間違いなく腰痛に苛まれているだろうと思われるのに、聞いてみたら当人はケロリとしていたり、別の患者さんが腰痛を強く訴えるから写真を撮ってみても、椎間板にも腰椎にも異常が見られなかったりすることが多かったそうです。

 

腰痛っていったい何なんだろうか、と興味を持って、腰痛が発生する状況を調べてみると、あるパターンが見つかりました。精神的に強いストレスを受け続けて、そのストレスから解放された瞬間、ぎっくり腰に襲われるというパターンが非常に多いそうです。

 

腰痛は多分に精神的なものなんですね。不思議なことに、それを理解すると楽になるんですよ。信じられないかもしれません。私も最初は信じていませんでしたから。でも、腰痛を抱えていて、英語が読める方は、ぜひこの本を読んでみてください。英語はいたって平易です。電子辞書を片手に簡単に読み進められます。

娘よ、ごめん。

ジャパネットたかたの創業者である高田明氏がテレビで奨めていたので、世阿弥を読んでみました。もちろん、現代語訳、林望先生の『すらすら読める風姿花伝』です。

 

最初のページを読んで猛省しました。

 

娘よ、ごめん。キミが凡人なのは、お父さんの教育が間違っていたからなんだね。

 

世阿弥によると、芸事は7歳ごろから始めて、最初はとにかく楽しく稽古するのが大切なのだそうです。

 

私はこれでも一応、翻訳家なので、娘に英語を教えています。始めたのは、娘が10歳をゆうに超えてからです。遅すぎた!

 

最初は楽しく教えていました。娘はその頃、素直でしたから。でも、子供はすぐに成長し、生意気になります。しかも中学になると、成績というプレッシャーがのしかかってくるから、ついつい声を荒げてしまいます。これではぜんぜん楽しくなくて、世阿弥の考えからすると、大失敗ではないですか。

 

この本を読んでからは、なるべく怒らないように気を付けています。しかし、事あるごとに娘をしかりつけてしまいます。だって、不甲斐ないんだもんな。

 

たぶん私に甘えがあるのでしょう。娘のために叱っているんだから、分かってくれるはずだし、娘がお父さんのことを嫌うはずがないという甘えが、この失敗の根本原因なんですね。

 

この本を読み進めていくと、だんだんと気分が重くなります。世阿弥によると、35歳くらいまでに大輪の花をきれいに咲かせた人は、その後もなかなか枯れないのだそうです。私は花を咲かせられませんでした。これからどんどん枯れてゆくのでしょう。もう枯れ果て、朽ちてしまったのかもしれません。このブログ、誰も読んでくれてないみたいだしな。あーあ。

秋になると家に侵入してくるアリ

秋になると、家の中にアリが出没しませんか。うちでは、毎年おなじ場所にアリが隊列を組みます。そこで役立つのがアリメツです。なかなかの優れもので、付属の小皿にアリメツを取ってアリの隊列付近に置いておくだけで、12時間もすれば、アリはほぼいなくなります。24時間後には、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』です。ただし、肉食アリには効かないそうです。効果が見られない場合は、アリメツに浸したカツオ節をアリの隊列付近に置くと何とかなるそうです。

10月7日の井上尚弥の試合を振り返って

先日の井上尚弥の試合、何度みてもびっくりですね。相手が足を揃えて後ろに倒れましたから。後ろに倒れるときは、とっさにバックステップを踏み、頭が床に打ち付けられてしまうのを防ぐものです。バックステップを踏めなかったということは、井上のパンチが強すぎて、パンチを受けた瞬間に気絶したのかもしれません。

相手が弱かったわけではありません。ファン・カルロス・パヤノ選手は、レベルの高い中南米ドミニカ共和国出身で、WBA世界バンタム級スーパー王座を獲得したこともあるし、IBO世界バンタム級王者でもあった人です。戦績は17勝1敗、そのうち8試合はKO勝利ですから、KO率は50%ほどあるわけです。「弱かったわけではない」のではなく、強いボクサーなのです。

中南米の選手は、独特のスタイルというか、一種異様なリズムというようなものがあり、対戦相手から見ると、攻略しづらいという特徴があります。現にパヤノ選手は、1ラウンドで終わってしまったのでよく観察できませんでしたが、極端に半身に構えて積極的にパンチを繰り出していました。試合が始まってから最初に手を出したのはパヤノ選手でしたし、打って出ていたのはパヤノ選手で、井上はよけるだけでした。あの一発がなかったら、井上は攻めあぐねて、積極果敢なパヤノ選手がポイントを重ね、井上が判定負けしていたかもしれません。

でも、あの一発はラッキーパンチだったのでしょうか。そうではないような気がします。これまでの試合を振り返ると、井上はどの試合でもすぐに相手の動きを見切って距離感をつかんでいたようです。パヤノ戦でも、開始1分ほどで相手を見切り、狙いすましてあのパンチを打ったような気がします。ラッキーだった面もあるでしょうが、まぐれ当たりではなかったでしょう。

兎にも角にも、スピードもパンチ力も兼ね備え、当て勘も鋭く、相手を見切る能力にも長けた井上尚弥は、具志堅用高をも上回る逸材なのかもしれません(あくまでも素人の意見ですけど)。次の試合が楽しみです。

檀ふみさんは、書く文章まで美しいという事実

檀ふみさんの若い頃のエッセイ『ほろよいかげん』を読みました。


父親が作家という血筋のためか、慶応義塾大学卒業という頭の良さのためか、きれいな文章で、高校の教科書に採用されたというのも納得です。育ちの良さもにじみ出る、気品あふれる文章でもあります。

 

たぶん、「コーヒーギフトはAGF」というコマーシャルに出ていた頃に書かれたのだと思いますが、170という長身のあれだけの美女であって、これだけ品があるのに、なぜ結婚しなかったのだろうか、と不思議でなりません。火宅の人を父親に持ったから、男性不信があったのでしょうか。