10月7日の井上尚弥の試合を振り返って

先日の井上尚弥の試合、何度みてもびっくりですね。相手が足を揃えて後ろに倒れましたから。後ろに倒れるときは、とっさにバックステップを踏み、頭が床に打ち付けられてしまうのを防ぐものです。バックステップを踏めなかったということは、井上のパンチが強すぎて、パンチを受けた瞬間に気絶したのかもしれません。

相手が弱かったわけではありません。ファン・カルロス・パヤノ選手は、レベルの高い中南米ドミニカ共和国出身で、WBA世界バンタム級スーパー王座を獲得したこともあるし、IBO世界バンタム級王者でもあった人です。戦績は17勝1敗、そのうち8試合はKO勝利ですから、KO率は50%ほどあるわけです。「弱かったわけではない」のではなく、強いボクサーなのです。

中南米の選手は、独特のスタイルというか、一種異様なリズムというようなものがあり、対戦相手から見ると、攻略しづらいという特徴があります。現にパヤノ選手は、1ラウンドで終わってしまったのでよく観察できませんでしたが、極端に半身に構えて積極的にパンチを繰り出していました。試合が始まってから最初に手を出したのはパヤノ選手でしたし、打って出ていたのはパヤノ選手で、井上はよけるだけでした。あの一発がなかったら、井上は攻めあぐねて、積極果敢なパヤノ選手がポイントを重ね、井上が判定負けしていたかもしれません。

でも、あの一発はラッキーパンチだったのでしょうか。そうではないような気がします。これまでの試合を振り返ると、井上はどの試合でもすぐに相手の動きを見切って距離感をつかんでいたようです。パヤノ戦でも、開始1分ほどで相手を見切り、狙いすましてあのパンチを打ったような気がします。ラッキーだった面もあるでしょうが、まぐれ当たりではなかったでしょう。

兎にも角にも、スピードもパンチ力も兼ね備え、当て勘も鋭く、相手を見切る能力にも長けた井上尚弥は、具志堅用高をも上回る逸材なのかもしれません(あくまでも素人の意見ですけど)。次の試合が楽しみです。