檀ふみさんは奥が深い

檀ふみさんは、『父の縁側、私の書斎』というエッセイを『ああ言えばこう食う』とほぼ同じ時期に書いていますが、この2冊、趣がまるで違います。しっとりとしたと言うか、落ち着いた雰囲気の文章です。読んでいて心が洗われる気がします。教会で十字架にはり付けられたキリスト像の前に膝をついて涙を流す、というほどまで心が清らかになるわけではありませんが、読んでいると嫌なことをすべて忘れられます。ふふふ、と笑みがこぼれるような、そこまで言うか、と驚くような、楽しい文章も書ければ、こんな風情のある文章も書ける檀ふみさんは、奥が深い、魅力的な女性なのでしょう。

こんなに魅力的な女性がなぜ独身なのでしょうか。周りにいる男どもの目は節穴なのではなかろうか。ウィキペディアによると、檀ふみさんは若い頃ラブレターを送ったけれども、返事をもらえなかったそうです。相手の男は、「コーヒーギフトはAGF」というあのコマーシャルを見たことがないにちがいない。NHKの「連想ゲーム」で檀ふみさんが活躍していたのを見ていなかったのか? 可愛らしさと美しさを持ち、教養もセンスも備えた檀ふみさんをふるか?! こんなに素敵な女性を幸せにしてあげたいとは思わないのか? そんな奴は馬鹿たれだ! と怒りがこみ上げてきますが、そのお相手は現在、フジテレビの取締役だそうです。立派な人物ではないですか。たぶん、檀ふみさんの長身に怖気づいた小男に違いない。

もしも檀ふみさんからラブレターをもらったら、僕は岩崎宏美さんの「ロマンス」です。

もしもとべるなら
とんでついて行く
たとえ嵐でも
たとえ遠くても
あなたが好きなんです

ラブレターをもらって、ほいほい付いて行く僕の方が馬鹿たれかな。