抽象名詞の訳し方

サマセット・モームの『Red』に、次のような文があります。

 

Ther girls resistance only increased Neilson's desire...

 

東京大学名誉教授の行方昭夫さんは、次のように訳しています。


娘の抵抗はニールスンの欲望を増すばかりで、...

 

さすがです。「only」を「ばかり」と訳すところは、今後参考にさせていただきます。

 

でも、主語の「娘の抵抗は」にちょっと違和感があります。

 

日本語には抽象名詞に弱点があり、生物ではないものが主語になることは少ないという特徴があります。

 

英語の抽象名詞を日本語に訳すときは、用言を使うと、こなれた訳文になる場合が多々あります。また、その抽象名詞が主語になっていますから、なおさら注意が必要です。

 

そこで、こんな訳を思いつきました。

 

娘に抵抗されて、ニールスンの欲望は増すばかり

 

自分ではうまい訳だなと思うのですが、そうでもないかな。よく見ると、僕の訳も無生物主語を使っているな。では、こんな訳はどうでしょう。

 

娘に抵抗されて、ニールスンは欲望を増すばかり

 

無生物主語の問題は解決したけど、原語から離れていないかな。時間をおいてから、客観的に見直してみないと、正しいかどうか分からないな。

 

翻訳って難しいですね。