『50代からしたくなるコト、なくていいモノ』岸本葉子

たしか、日曜日に早起きしてNHKをつけると、岸本葉子さんが俳句の番組の司会を務めていますよね。ゆっくり、のんびりとした語り口は、のろまな私には好印象です。早口でまくし立てる、私の妻のような人には、ややもするとモタモタした口調にイライラさせられるかもしれませんが、私は好きです。

ゆったりした文章で、基本的に楽しいのですが、どこか暗さが付きまといます。どうしてなんだろう、と不思議に思っていたら、最後まで読んで納得しました。40歳で癌を経験しているんですね。それも虫垂癌という、見つけにくい癌で、手術後に生き残れる確率は3割だったそうです。何もかもさらけ出して爆笑を誘うエッセイストとは一線を画すようになって当然です。

私ももうすぐ50歳なので、この先どのように生きて行くべきか、老いとどう向き合うべきなのか、そういったことを学ばせてもらうかなと思ったら、そういう内容ではありませんでした。でも、さすがは定評のあるエッセイストですね。初めて読みましたが、どんどん引き込まれて、一気に読んでしまいました。