『百人一酒』俵万智

お酒を話題にしたエッセイです。よくまあ、お酒の話をここまで続けられるよな、と感心してしまいます。本当にお酒の話だけなんですよ。たまにはお酒以外の話も混じるだろうと思っていたら、108話すべて、最初から最後まで徹頭徹尾、正真正銘、お酒の話だけ。俵万智さんって、本当にお酒が好きなんですね。

好きこそ物の上手なれで、お酒の知識の深いこと、深いこと。読み始めると楽しくて、どんどん読み進められます。予想がつくとは思いますが、読むとお酒が飲みたくなります。それだけではなく、実際には飲んでいないのに、ほろ酔い気分になってきます。俵万智さんの言葉の魔術なのでしょうか。

ほろ酔いかげんでどんどん楽しく読み進めていくと、だんだんお腹いっぱいになってきます。別の言い方をすると、鼻につくようになってくるというのかな。シャトーがどうのこうの、ビンテージがどうしたこうした、このお料理にはこのワインを合わせるとか、そういうお洒落な話になってくると、ダサい僕は反感を持ってしまうんだな。高価なお酒をごちそうになったなんて話を聞くと、やっぱり俵万智さんは僕とは別世界の人なんだなって思ってしまうのは、僕のひがみ根性が強すぎるんだろうな。