SICKってヤバイよね

私はこれでも翻訳家の端くれなので、たまには英語の話題を。

「sick」という英単語を小学館ランダムハウス英和辞典で調べると、次のように定義されています。

1. 病気の、かげん(ぐあい)が悪い
2. むかついて、吐き気を催して
3. すっかり不愉快になって、うんざりして、(熱望で)こがれて、悩んで
4. 心(道徳心、感情)がおかしくなった
5. 病的な、不健全な
6. 気味の悪い、ぞっとするような
7. 病人の、病人のための
8. 病気に伴う、病気を示す、病気を思わせる
9. いやでたまらない、しゃくにさわって、むしゃくしゃして
10. 調子が狂って、ぐあいが悪くて、不調で
11. 月経中で
12. 十分な収穫を上げられない、有害微生物を含む

良い意味はないようです。

ところが、YouTubeで動画を見ると、この「sick」が良い意味で使われていることがあります。https://www.youtube.com/watch?v=3QjI_ddV88oをチェックしてみてください。少年が小包を開けてけん玉を取り出しているのですが、「sick」を連発しています。

it's pretty sick it's a mystery kendama unboxing
Oh boys boys this is sick
holy this is sick

その少年は、「sick」を連発しているからといって、そのけん玉が気に入らないようではなく、それとは正反対に心の底から喜んでいる様子です。たぶん、この少年は、日本語の「ヤバイ」という感覚で「sick」を使っているのでしょう。

「ヤバイ」という言葉は、私が若いころは悪い意味でした。「先生にバレたらヤバイよ」というように使っていました。今の若い人たちは、この同じ「ヤバイ」を良い意味で使うんですよね。関西方言の「めっちゃ」と組み合わせて、「めっちゃヤバイ」などというように使われているのをよく耳にします。私がけん玉の難しい技を決めたとき、10歳年下のけん玉仲間が、「うわっ、ヤバッ」と「ヤバイ」の短縮形を使って驚きを表現したときは、褒められているのかけなされているのか、一瞬とまどいました。

「sick」にも、「ヤバイ」と同じような意味の変化が起こっているのでしょうか。それとも、YouTubeのこの少年だけが特殊なのでしょうか。